FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

橋姫 前編

さて、小説もラストが見えてきました
何とか締め切りには間に合いそうです
今回は語り手である「私」が蒐集した話となっております
橋姫とはパルスィの元ネタに当たります
なので、作中にもパルスィらしき台詞が入っております
……といっても「妬ましい」だけですけどね

では、何時もの様に続きからで





私は、個人的な道楽で各地に伝わる奇談を蒐集するために全国各地を旅している。
 面白そうな話があると聞けばどんなに遠かろうともその地へ出向き、その話を書物に纏めるのだ。
 今回は私が蒐集した話をしよう

 時は嵯峨天皇の御世の事。まだ平安京に遷都して間もない頃の話である。
 とある公卿に一人の娘がいた。
その娘は大変に美しかったのだが、非常に嫉妬深かった。
ある時、契りを結んだ男の情が別の女に移ってしまった。
「妬ましい、妬ましいわ……! 私と言う人がありながら別の女の所に行くなんて……心変わりした男が憎い。それに、誘惑した女も妬ましいわ……!」
この娘はどの様にして復讐するかを考えた。
そして、悩んだ末に縁切りの神として信仰されている貴船神社に詣で、祈祷の為に籠もる事にした。
「貴船大明神よ、私の願いを聞いてください。妬ましい女を取り殺すために、私を生きながらに鬼神に変えてほしいのです」
昼も夜も女はこの様に祈り続けた。
この娘の事を哀れに思ったのだろうか、七日目の晩に貴船大明神が姿を現した。
「この事は実に不幸な事であった。真の鬼に成りたくば、姿を改めて宇治の河瀬に行き三十七日間浸ると良い。さすれば、汝の望む力が手に入るだろう」
このお告げを聞いた娘は大層喜んで都に帰った。
「待ってなさい……私を捨てた報いを受けさせてあげるわ。……今頃あの人は女と幸せな暮らしをしているんでしょうね。それにしても妬ましいわ、本当に妬ましい……」
娘は都に着くと早速人気の無い場所に籠もり、自らの長い髪を五つに分けて五本の角を作り、顔には朱をさし、体には丹を塗って全身を赤くし、鉄輪を逆さにして頭の上に載せ、その三本の脚には松明を燃やし、両端を燃やした松明を口に咥え、夜更けの大和大路を走り抜けて宇治川へ向かうのだった。

それから何日か後に、京には鬼が現れるという噂が流れ始めた。
それは毎晩丑の刻になると大和大路を疾走して行くとの事である。
それを一目見ようと若い男が数人、夜の大和大路へ出向いていった。
「なぁ、お前って鬼見たことあるか?」
「いや、無い」
「もしも見つけたら捕まえて見世物にしてやろうぜ」
「ははは、それはいい」
 間もなく丑の三つ時になる頃だろうか、三条通の方に火が浮いているのが見えた。それに伴って何か声の様な物も聞こえてくる。
「あれはなんだ?」
「遂に鬼が出たか?」
 その火が近づくにつれて次第に姿が鮮明になる。
「くけけけけけけけけけけけけけけけけけ!」
 頭に五本の火を燃え上がらせ、全身を真っ赤に染め、般若の如き表情で走る姿は地獄の鬼そのものであった。
「ひぃっ!」
男は驚きのあまり腰を抜かしてしまった。
しかし、鬼は男には見向きもせずに泉涌寺道の方へ走り去っていった。
「お……おい、見たか今の」
「……」
「おいっ! 返事くらいしろよ!」
何度呼びかけても返事は無い。既に息絶えてしまったようだ。
髪は完全に白くなり、顔には恐怖の色が浮かんでいた。
「そんな……」
この話は瞬く間に京中に広まった。
以後、深夜に外を歩くものは居なくなったという。

三十七日を過ぎると娘の姿が見えなくなった。
それと時を同じくして、男が浮気していた女が病に倒れた。
様々な祈祷をしてみるものの、容態は悪化する一方であった。
次第に女は「鬼が来る、鬼が来る」と言うようになった。
しかし、周囲の人間には何も見えない。
男は必死に宥めようとしたが、まったく無意味であった。
そのうちに女はあっけなく死んでしまった。
死の直前まで鬼が私の命を取りに来た、と言って。
女が死んだ後、その縁者にも被害は及んだ。
元気だった者が突然病に倒れ「鬼が来る」と言いながら死んでしまうのである。
こうして女の血筋は絶えてしまったのである。
しかし、この犠牲者はこれだけではなかった。
浮気した男の親族までもが病に倒れたのである。
男は自分と縁のあった者が皆死んでしまい、精神的に参り始めてきてしまった。
そしてある日の晩。男が一条戻り橋を渡ろうとした時の事である。

「まずいまずい、この辺りには鬼が出るというのにこんなにも遅くなってしまった」
そうして橋を渡ろうとした時、一人の女性を見つけた。
見たところ二十代前半くらいで、雪のように白い肌を持ち、紅梅柄の打衣を着ている。
「ウホッ! いい女……」
暫く見とれていると、その女は男へ近寄ってきてこう言った。
「近頃は夜も物騒です。もしよろしければ、私の事を家まで送ってくださらないでしょうか」
いい女に弱い俺はホイホイと返事をしてしまったのだ。
しかし、何を話しかけても女は一向に反応しなかった。
仕方ないので堀川の東岸を南へ下り、正親町通に差し掛かる頃に女が口を開いた。
「実は私の家は都の外なのですが、それでもよろしいでしょうか?」
と尋ねてくる。
俺は少し疑問に思ったが、礼はするというので家まで送る事にした。
スポンサーサイト

COMMENTS

No title

やらないかの踊り踊れますか???

COMMENT FORM

TRACKBACK


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。